人生にはいくつ目標があってもいい

人生をよりよく生きるためには目標が不可欠です。ではその目標は一つがいいのか、あるいは2つも3つもあったほうがいいのかという問題が出てきます。実際に目標がいくつもあって困る人もいるはずです。

一般的には一つの目標にしぼり込んで、それに専念すべきだと考えられます。「成功の秘訣は目的の一定不変にある」(エマーソン)という言葉もあるくらいです。だが目標は一つでなければならないかといえば、いくつあってもいいです。むしろたった一つというよりも、同じような道筋にいくつかあるのがより好ましいです。

たとえば青年が医者になるという目標を立てたとします。医者になるには医学部に入学すること、国家試験に通るという絶対的な関門があります。その目標に向かって努力をはじめましたが、不幸にして父親に先立たれ経済的に苦しくなってしまいました。

このようなとき、早くも挫折感を抱く人もいるでしょう。中にはふてくされて人生を棒にふってしまうかもしれません。「自分の唯一の夢は破れました。もう人生は灰色だ」。これは目標が一つしかない欠陥です。

だが医学部を目指して勉強するようなタイプは優秀ですし、また勉強する意欲もあります。その長所を利用して、同じ国家試験でも司法試験を受ければいいです。医者と弁護士ならどちらも社会のエリートです。「絶対にこれだけ」という目標の立て方はよほど注意しないと、物理的に不可能になる場合があるものなのです。

たとえばA子という女性が好きで「結婚したい」と思います。人生の目標として「A子と結婚すること」を定めたとします。ところがまもなくA子は結婚してしまいました。完全な挫折です。こういう種類の挫折がおうおうにしておきます。

この場合、どうすべきだったかといえば、最初からターゲットを特定せずA子のような女性と結婚する」という目標の設定をすればよかったのです。その中には当然A子も入りますが、A子のもつ属性を備える他の女性もターゲットに入ってきます。つまり目標は単一ではないわけです。このような目標のつくり方をすればやたらに挫折することはありません。

目標が複数のメリットは三つあります。第一は挫折することが少ないのでいたずらにマイナスの自己暗示にかからないですみます。第二にそれが人間の自然な姿である(人間はあれもしたい、これもしたいと思う動物だ)。第三に精神的な余裕が出てきますので、自分のいちばんよい面が出てきて目標が達成しやすいことです。